◎ 干潟概況
造成時の当該人工干潟は、底部に埋め立て地から出た浚渫土を5m近く入れ、その上は約1mの海砂(シルト・粘土分約5%)で覆われていた。当初は次頁の干潟断面図の破線で示すように、護岸から潜堤に向かって緩やかな勾配で傾斜していた。
しかし、7年経過した現在では護岸から30mほどの間で、かなり傾斜がきつくなっている(写真1)。干潟高部から中部にかけて波浪により相当量の砂が流出し、逆に護岸付近ではうち寄せられた砂が堆積したと推察される。
この傾斜のきつい干潟高部、中部で試掘を数カ所行ったところ、砂の粒子が粗く、粒径2@以上の礫が大半を占めていた(写真2)。これらの場所では干潟生物は見られず、わずかにヒメスナホリムシが観察されたのみであった。当初表層を覆っていた海砂の粘土・シルトなどの粒径の小さなものは沖へ運ばれ、粒径の大きな礫が残ったと思われるが、このような、有機物が留まりにくい環境下では、干潟生物の生息は困難である。
さらに、干潟の南部分は台風などで砂が流出し、かなりの面積にわたり干潟が消失している。このため、調査地点Cは干出している部分の南端に近くなっている。また、干潟全体が沈下、砂の流出により著しく面積を減じている。
調査地点B,Cの潟土質はほぼ等しく、粒径2mm以上の礫と粗砂、細砂の混じったものであったが、C地点の方が礫の割合が多かった。
A地点は、2年前に山砂(1万1千トン)が入れられた部分で、干潮時には次頁の干潟平面図に示すように長く沖方向に突き出すような形となっている。この山砂は牡蠣殻、礫、砂、シルト、粘土などさまざまな大きさの粒子が混じり合っており、干潟の他の部分とは異なった様相を呈している。また、A地点では50cm以深は黒い還元性土壌であることが、コア・サンプラーでの採集によって確認された。
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