|  人工干潟の成功例と言われる3つの干潟の底生生物調査を行ううち、底生生物量と、土壌粒子の粒度組成の関係を知る必要があるのではないか、との考えに至った。  以下は、先に報告した人工干潟底生生物調査の結果に、土壌粒度組成のデータを加え考察したものである。  近年、開発に伴い埋立等で急速に干潟が消滅していく中でミチゲーション(自然環境への影響緩和策)の概念に基づき各地で人工海浜、人工干潟が整備されるようになってきたが、一口に人工海浜、人工干潟といってもその立地、水域の状況、投入された砂泥の質や量、潜堤や導流堤の形状など、その環境条件は様々であり、また、どのような干潟を創るのか、というビジョンによってもできる干潟の性格、生物相は自然干潟同様、個々の干潟で大きく異なるものとなる。  本調査では、全国の人工干潟の「成功例」とされる、広島五日市、葛西人工海浜(東なぎさ)、大阪南港野鳥園の3カ所を選び、底生生物調査を行った。  広島港五日市人工干潟では、造成1年後から2年後の生物調査の報告がある。今回の調査ではその後の五日市人工干潟の生物相、および現存量がどのように変化したかを知るために調査地点はその調査とできる限り同じ地点を選び、過去のデータとの比較を行った。  葛西海浜公園は東京都江戸川区南端の荒川と旧江戸川河口部に造成された人工海浜である。この海域はもともと三枚洲と呼ばれる自然干潟を中心にした広大な浅瀬域であったが、開発に伴う埋立等で失われた自然海浜や干潟の代償として東京都によって整備されたものである。  大阪南港では、開発に伴い破壊された自然環境回復のため、埋立地内に人工干潟の整備が行われた。 今回の調査では、造成当初からの海水池である西池と、海水を導入して3年目にあたる北池について、底生生物調査を行った。 (1) 調査日時  広島港五日市人工干潟  1998年5月26日 13:00〜19:00 干潮 16:01(潮位 -12cm)
  葛西人工海浜(東なぎさ) 1998年6月10日 10:00〜14:00 干潮 11:08(潮位 15cm 荒川ポイント)
  大阪南港野鳥園 1998年7月4日  9:30〜13:30 干潮 10:31(潮位 109cm)
 (2) 調査方法 1)コードラード法  それぞれの調査地点内で任意の場所に一辺が25cmのコードラードを設定し、スコップで30cmの深さまで素早く掘り、1mmメッシュ※の篩で少しずつ砂泥をふるい落とし、すべての生物を拾い出した。  採集した生物は、10%ホルマリンで固定し個体数および湿重量を測定した。  ※掘り出した砂泥が1mmメッシュで落ちなかった場合は、2mmメッシュを用いた。 2)コア・サンプラーによる深部調査  長さ1.4m、直径83mmのコア・サンプラー(断面積50平方cm)を干潟泥中に打ち込み、底生生物の採集及び、干潟泥土の観察記録を行った。  アナジャコ類の個体数については、干潟表面に開口している巣穴をカウントし、1平方mあたりの個体数を計算した。  
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