広島港五日市の「人工干潟」の実態調査に続いて、もうひとつの“成功例”といわれる、東京湾葛西の「人工渚」を調べようということになった。
五日市での第1印象は、そこにあるのは“干潟”というより“砂浜”であった。
波で流失してやせ細った感じだがきれいな砂浜で、これが「人工海浜」をめざしていたというなら、納得できそうなものだった。
また、説明を受けた県の港湾課担当者や、野鳥の会の方、私たちが参考にした論文の著者などから伺ったところ、何しろ10年も前に、全国に先駆けて取り組まれたという、「人工干潟」による環境復元への熱意や、その後の試行錯誤しながらの継続した取組みや誠意ある事後調査など、NGOと行政が協力しての実践には頭が下がる思いだった。
さらに、造成の前に、干潟の実態調査で野鳥と底生生物をしっかり把握されており、そこから、コメツキガニやアナジャコ、ヒドリガモなどの、消失前の干潟がもっていた特性を象徴する優占種の復活を、「人工干潟」のめざすべき機能として、明確にされていた点にも教えられた。
東京湾葛西でも、江戸川、荒川河口地区の干潟消滅に対する代償として、人工的に干潟を造成する実験を繰り返したあと、あえて海浜公園の一部を「人工渚」として、しかも、人が入って楽しむための「西なぎさ」と、人を立ち入らせず、自然の力による環境の復元をまつ「東なぎさ」と目的を明瞭にしつつ、あくまで謙虚に構えておられる点に好感をもっていた。
また、事前事後の調査も充実していて、10年経過後の生物量から推定される浄化機能が自然の干潟の3分の1程度であること、洪水などの影響を受けやすく、安定した生態系の復元までにまだ長期間を要することなどが報告されている。
しかし広島での経験から、自分の目で見て、手で掘ってみることが、良く理解するために絶対必要なことと学んだので、東京都の協力を得て現地調査をさせていただいた。
当日雨になり、潮の都合で上陸に苦労するなど、関係した方々のご苦労に心から感謝しつつ、その調査結果を報告したい。
「人工干潟」実態調査委員会、
現場調査班代表 辻 淳夫(藤前干潟を守る会)
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