昨年4月の諫早湾締め切り『ギロチン』の衝撃はいまも生々しいが、つづいて行われようとしている、全国一の渡り鳥渡来地・藤前干潟のゴミ埋立計画も、衝撃的な破壊計画として、保全を求める声が内外に高まっている。
藤前干潟のゴミ埋立計画は、現在、事業者(名古屋市と名古屋港管理組合)が進める環境アセスメントの大詰め(知事意見のための愛知県環境影響評価審査会議が審査中)にあるが、その前段で、名古屋市環境影響評価審査委員会は「準備書」の『影響は小さい』とする評価をくつがえし、『環境への影響は明らか』とする答申を出した。
これは、これまでの公共事業では例のない画期的な答申(この点に限って)であり、事業者の調査と評価を「恣意的、欺瞞的」なものと、自らのデータをもって批判してきた市民サイドの意見を、審査委員会も認めざるを得なかったからだ。
しかし、答申は狡猾にも、「影響が明らか」なら当然取るべき影響回避の措置=代替策の検討を求めず、「実施するなら以下の自然環境保全措置を取るように」と、『人工干潟などの代償措置』の検討を示唆している。
名古屋市は、答申と同内容の「市長審査書」をもって、『計画は容認された』として、市民サイドから強く要望されている代替策の検討はせず、あくまでゴミ埋立計画の実施を前提に、「人工干潟検討委員会」なるものを立ち上げようとしているが、その性格は全国に成功例なしといわれる「人工干潟」の実現可能性を検討するものではなく、その造成を前提に位置や規模、工法などの検討をするものになりそうである。
干潟を実際に体験しているものなら、干潟を「人工」で造れるとは考えもしないが、単なる言葉のイメージが独り歩きして、まかり通ろうとしている。この状況を座視すれば、影響は藤前干潟にとどまらず、全国に及ぶに違いない。その意味で、いま事業者サイドが成功例として挙げる「人工干潟」なるものの実態を、NGOサイドとして把握することが緊急に必要であろう。
そこで、湿地NGO、生態系研究者などで「検討委員会」を立ち上げながら、東京湾葛西、広島港五日市、大阪南港などの「人工干潟」の実態調査を行うことになった。
ここでは、まず初めに取り上げた、広島港五日市の実態調査の結果を報告する。
「人工干潟」実態調査委員会 辻 淳夫
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