近年、開発に伴い埋立等で急速に干潟が消滅していく中でミチゲーション(自然環境への影響緩和策)の概念に基づき各地で人工海浜、人工干潟が整備されるようになってきたが、一口に人工海浜、人工干潟といってもその立地、水域の状況、投入された砂泥の質や量、潜堤や導流堤などの形状など、その環境条件は様々であり、従って生物相も自然干潟同様、個々の干潟によってかなり異なるものと思われる。
人工干潟の実態を知るためにはできる限り多くの事例を調査する必要があり、広島五日市人工干潟に続き、葛西人工海浜(東なぎさ)で底生生物現存量調査および干潟深部のアナジャコ類調査を行った。
葛西海浜公園は東京都江戸川区南端の荒川と旧江戸川河口部に造成された人工海浜である。この海域はもともと三枚洲と呼ばれる自然干潟を中心にした広大な浅瀬域であり、かつては海苔養殖やアサリ・ハゼ等の沿岸漁業が盛んに行われていたが、開発に伴う埋立等により失われた自然海浜や干潟の代償として東京都によって整備されたものである。
葛西人工海浜は東西2つのなぎさから成り、東なぎさ(30ha,うち砂浜10ha・浚渫砂泥投入)は渚の生物や野鳥保護のため立入が禁止され、自然保護区となっている。一方の西なぎさ(38ha,うち砂浜15ha・山砂投入)は海の自然と人とのふれあいの場として解放され、開園以来多くの人が訪れている。
今回の調査にあたって、東京都のご好意により東なぎさへの立ち入り許可をいただき、生物の採集を行った。
◎ 調査地点
底生生物の定量採集は下図に示すようにA,B,Cの3地点で行った。A地点は最も潮が引いた時点で現れた場所であり、B地点は石積み島堤の内側、C地点は導流堤に近い場所である。各地点とも数メートルおいて2カ所ずつ、計6カ所で採集を行った。
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