以下に、アナジャコの巣穴と土壌成分との関係を述べる。
当地区のアナジャコの巣壁には、表面から数mmの厚さに酸化鉄を含んだ粘土粒子がみられる。粘土粒子が砂粒を固め、アナジャコの起こす水流により、新鮮水が泥中に含まれる還元状態の鉄を酸化し、酸化鉄を含んだ強固な巣壁を作っているのである。A地点においては、大径の礫も含まれるが、粘土粒子もある程度含まれている。したがって、大型のアナジャコであれば生息可能だと思われる。ところが、B、C地点には粘土粒子がほとんど含まれていないため、ある程度以上の径の巣穴は崩れてしまうと思われる。3年目に入ったアナジャコの巣穴を支えられるだけの強度が得られないのである。事実、B、C地点では、コア・サンプラーを引き抜くと、試料のコアが崩れてしまうことが多い。
藤前干潟においては、干潟東端は砂質であるが、西側ほど地盤高も下がり、シルト・粘土の割合も増える。また、アナジャコの生息数も西側の方が多い。このような粘土〜泥質土壌が、アナジャコ類の生息には適しており、逆に、アサリなどの生息環境にはやや不向きである。
これに対して五日市の人工干潟は、造成当時に比べると、シルト・粘土粒子の流出が著しく砂が主体の土壌になっており、二枚貝(特にアサリ)の生息に適した環境であると言える。
このため、事業前には優占種が、コメツキガニ・アナジャコであった八幡川河口干潟に対して、造成後の干潟の優占種はアサリ・ゴカイとなったものと考えられる。
採 集された個体
A 地点
・ヨコヤアナジャ コ 採 集深度30cm甲長15mm
・アナジャコ採集深度40cm甲長23mm
・アナジャコ採集深度45cm甲長28mm
・アナジャコ採集深度45cm甲長25mm |
B 地点
・アナジャコ 採集深度35cm甲長18mm
・ニホンスナモグ リ 採集深度65cm甲長15mm
・ニホンスナモグ リ 採集深度85cm甲長12mm
・アナジャコ 採集深度21cm甲長18mm |
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