Fujimae Booklet 2

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(3)各地点における生物量及び土質と考察

A地点

 この地点は、干潟の沈下・海砂の流出への対策として山砂を補充した部分であり、投入後2年を経過している。カキ殻の処理も兼ねて、カキ殻と山砂を混ぜて投入したとのことである。

 粒度組成については、粘土から礫、カキ殻まで様々で、後述するが、粘土・シルト分がまだ残っているため、比較的大きな個体が生息できるものと思われる。
 粒度組成については、B、Cの2地点では、造成後2〜3年で、粘土・シルト分の流出をみており、その意味で、A地点でも、今後の粒度組成の変化と、それに伴うアナジャコの生息数、個体の大きさ等の変化を調査する必要がある。

 採集されたアナジャコは、頭胸甲長から考えると3年目に入った個体までで、それ以上のものは採集されなかった。これは、上記のように、山砂が投入されてから2年しか経っておらず、砂の投入後着底した個体のみが生息しているためと思われる。

 個体数については、成体144個体/平方m、新規着底個体(本年孵化し、着底したもの)64個体/平方mと、成体の個体数の方が幼体のものより多い。これは、山砂の粒度が一定しておらず、特に、大径の礫が含まれると、新規着底個体の力では巣穴を掘ることができない為だと考えられる。

 次に、アナジャコ類の巣穴を、藤前干潟のものと比較してみる。

 藤前干潟においては、A地点で採集されたものと同程度の個体(頭胸甲長25mm程度)であれば、その巣穴は干潟表面から1m以上掘り下げられている。当地区のアナジャコの巣穴は、そのほとんどが50〜55cmどまりであり、前述のように、多いところでは100個体/平方m以上の密度を示す。そこに、粒状組成も手伝ってか50cm程の深さまでは、酸素の供給された状態の砂(色としてはp.15に示した写真とほぼ同じ)であり、50cm以深は、還元状態の鉄を含む黒色を呈する砂となっている。

B地点

 山砂による低い突堤と、潜堤に囲まれた形の比較的波の静かな地点である。泥土の粒度組成に、粘土・シルトをほとんど含まないため、径の大きい巣穴は崩れてしまうと思われる。そのためか、B地点では、比較的小型のアナジャコまでしか採集されなかった。

 B地点では、約1mまでの打ち込みが可能であったが、50cm以深からは同じアナジャコ下目のニホンスナモグリが採集された。A地点でこの種がみられなかったのは、粒度組成と、採集場所にアナジャコが高密度に生息していたため、生息していないか、又は、極めて少ないかであると思われる。逆にB地点では、やや砂地であり、アナジャコの密度が少ないため、スナモグリの割合が多いものと思われる。巣穴カウントでは、336個/平方mであるが、うち確実にアナジャコ成体とわかるものは48個であり、Y字型の巣穴であるとすれば、成体の個体数はこの1/2の24個体/平方mとなる。残り288個のうち、採集結果より、スナモグリと、アナジャコ成体がほぼ同数いると仮定すると、スナモグリの巣穴開口部は1個体当たり1個であるので、残り264個の1/2が新規着底個体のものと考えられる。

 即ち、アナジャコ成体24個体、スナモグリ成体24個体、アナジャコ新規着底個体132個体の計180個体/平方mということになる。

C地点

 台風等により覆土が流失した部分に近く、粒度組成は粘土・シルトが少なく、礫分が50%近くを占めるため、アナジャコ類の生息には不適だと思われた。アナジャコは採集されず、わずかにミナミテッポウエビが1個体採集された。

 また、礫分が多く、粒子の間隙が大きいため、泥土は約80cmまで酸素の供給された状態の色を呈していた。

 

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