Fujimae Booklet 2

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◎ 葛西人工海浜(葛西海浜公園内)の生物相について

 葛西人工海浜における底生生物およびその浄化能については、木村賢史らが詳細な調査を行っている(1991,1992)。それによると、葛西人工海浜およびその地先の底生生物は季節により種類数、個体数が大きく変化し、全体に底質環境が不安定な状況にあること、さらに周辺の自然干潟である三番瀬、盤洲干潟と比較すると、底生生物の種類数等が少なく、人工海浜の浄化能は自然干潟の約3分の1であることが報告されている。

 今回の調査では、1地点の採集箇所数が少なかったため、調査で得られた結果がそのまま調査地点付近の平均的生物層であるとは言えないが、東なぎさにおいて、沖合い(海側)の地点(A地点)で二枚貝類の比率が高かったことから現存量が大きな値となった。また、個体数からいえば、岸より(陸側)の地点ではゴカイ類が多く、さらに中間地点においてはアナジャコ類の巣穴が多数確認されたことから、現時点において底生生物の生息環境は良好であると言えよう。しかし、碇ら(未発表)は西なぎさにおいて1971年の造成前から造成期間中、造成後の比較を行い、人工海浜の動物相が安定していないことを指摘している。特に湿重量で大きな値をしめるアサリ、シオフキガイなどの二枚貝類の生息が年によって大きく変動すると報告している。西なぎさと東なぎさでは投入された砂泥の質が異なり(前者は山砂、後者は浚渫砂泥)砂浜の傾斜等の地形的条件も異なるため、同列に論じることはできないが、一方で、この海域の二枚貝類は外部からの幼生供給によって群集が維持されていると指摘されており(風呂田・1997)、現存量の大半を占める二枚貝類が外的要因によって増減することで、年により全体の値が全く違った物になる可能性が大きい。こういった動物相の変動は、淡水の流入変動、青潮の発生などこの海域の環境変動の影響によるものと推察され、現在良好である葛西人工海浜・東なぎさの底生生物の生息状況も周辺海域の環境によって、変動する可能性が高いと思われる。

各調査地点出現生物写真


 

 

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