Fujimae Booklet 2

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6 まとめ  

 大阪南港野鳥園人工干潟は、最初の造成工事から15年が経過する。しかし、開園10年目頃から、環境改善のため、西・北池の連結、南池の排水用水門の設置、ヒューム管増設、昨年はヒューム管内の清掃等々、環境への働きかけが続いている。したがって、生物量もまだまだ変動してゆくと思われる。中でも北池は海水の導入後3年目であり、以前が淡水池であったことを考えると、安定状態に達するまでには、かなりの時間を要すると思われる。実際、北池については、周辺のアシが、海水導入後、わい化してしまい、草丈の低いものになってしまったという(もっともこれは、海水の影響の他に、系内への物質流入量と系外への流出量のバランスが崩れたためということもあるのでは、と個人的には考えているが)。

 ところで、当人工干潟では、NGOと行政との意見交換・合同調査等、両者が協力して事にあたっている姿勢が見られ、好感が持てる(とは言うものの、そこまでに至る過程に、NGO の多くの労力が費やされたであろうことは想像に難くないが)。

 前回、前々回の葛西、五日市でもこのような姿勢が見られ、「人工干潟の成功例」というよりは、「NGOと行政の協力体制がはかられている」という点においての成功例ということである。

 葛西、五日市の2つの例からも、たかが10年15年といった短いスパンで人工干潟の評価を行うことは危険であるし、多様な環境を有し、変化の多い干潟生態系を、ある瞬間の調査のみで云々することは極めて不遜な、かつ環境に対する無理解をさらけ出す行為であるということを我々は学んだ。

 大阪南港人工干潟は、前述したように埋立地の中に造成された、しかも直接外海に面していないという、ある意味で貴重な実験環境ということができる。今回の調査時の底生生物量は、残念ながら多いとは言えないし、単に生物量だけの比較でものを言うのであれば、「成功例」とは言いがたい。しかし、見るべきはむしろこれからである。この、極めて閉鎖的な環境下で、しかも、自然干潟からの生物供給が難しい状況で、どこまで環境を造ることができるのか、そして、「大阪南港の埋立地内にシギ・チドリの楽園を」という開園時の目的にどこまで迫ることができるのか。これまでの結果よりも、むしろこれからの実践、研究に期待したい。 


大阪南港人工干潟底生生物調査

1998年7月4日調査実施

現場調査参加者:
花輪伸一(WWFJ)、大阪南港グループの皆様
小嶌健仁、加藤倫教、伊藤恵子、辻 淳夫
(以上4名 SFA)
 情報提供協力者:高田博(南港グループ)


 

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