4. 出現生物種と土質、及び考察
南港野鳥園人工干潟の底生生物量を、前ページまでにまとめた。北池については、海水を導入して3年目、ということで、造成直後と言ってもよい状態である。むしろ、今後どのように生物量が変化してゆくのか、継続した調査がなされることを期待したい。
その様な条件があるものの、調査地点全体を見た場合、出現生物種及び個体数は少ないといわざるを得ない。
原因として考えられる点を以下に挙げる。
(1) 閉鎖的な系である。
前述のように、当該人工干潟は、埋立地に造成されたものであり、河川からの栄養塩類、有機物の供給が期待できない。また、海からの供給も、ヒューム管のみで連絡していることからすると、自然状態の干潟に較べて少ない。結果、付着藻類や、デトリタス食の底生生物量が少なくなると思われる。
このように、物質循環の面から見た場合、栄養塩類、有機物の供給に対し、鳥類の採餌、水流による流出等で系外へ持ち出される量が増加すると、当該人工干潟の生物量は減少すると思われる。
(2) 底生生物又は底生生物幼生の漂着が少ない。
上記の事項に関連するが、捨石の間隙を通してしか、海水が流入しないため、プランクトンの状態で生息域を拡げる底生生物の幼生が漂着しにくいのではないかと思われる。
今回の調査でも、アナジャコ類が採集できないかと期待していたのだが、結局1個体も採集されなかった。これは、西池では、粒土組成で見ると、礫質が多く、アナジャコ新規個体が巣穴を掘るには適さないこと、西・北池連結部分では、粒土組成はよいものの、掘削されて3年目と、新しすぎて着底していないのではないか、と考えられる。
(3) 潟土に対する酸素の供給が不足しがちである。
調査地点A、Cでは、干潟表面から数mm下に、還元層又は有機物の堆積が見られる。投入された砂は、山砂と海砂の混合砂であり、粒度組成を見ると礫質が30%を越える。
五日市では、礫質が多く水はけがよすぎて、有機物の堆積が少なく、干潟上部にはほとんど底生生物が見られなかったが、当人工干潟ではこれだけの礫質があるにもかかわらず水流がほとんど無いため、有機物の流出が少ないのではないかと思われる。結果として、水流による酸素供給が少なく、植物の枯死体が運び去られず、また分解が遅い、という状況になっていると思われる。
(4) 北池では夏季に水温が上昇しすぎる。
今回の調査は、7月はじめであったが、それでも北池奥部の水温は、手を入れると温かいとわかる程に上昇していた。これは、前述したように、北池奥部では水流がほとんど無い事、さらに、黒色の有機物(植物残渣)の存在で、太陽熱を吸収しやすくなっていると思われる。ここまで水温が上がると、底生生物の棲息には条件が悪いのではないかと思われる。
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