Fujimae Booklet 2

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2 東京湾葛西海浜公園−東なぎさの例  

 東京湾の干潟は90%以上が埋立てられ、今や盤洲、三番瀬、富津、そして埋立地に囲まれながら、かろうじて海とつながって生きている谷津干潟のみになった。特に東京都内には、葛西沖の三枚洲と京浜島沖に少しを残すだけという。

 千葉の干潟を守る会の田久保晴孝氏によれば、東京湾ではかつて羽田飛行場拡大のために羽田洲(干潟)が埋立てられ、そこで観察されたハマシギ1万羽をはじめとするシギ・チドリ類(都内で越冬していた個体群)は絶滅してしまったという。

 東京湾葛西海浜公園は、このような急速な環境破壊への代償措置として計画され、人の出入りを前提とした西なぎさと、人の出入りを禁じた東なぎさからなる。後者では、自然の干潟と野鳥の生息地を少しでも復活させようと目的を明確にしている。そして安易に「人工干潟」などと広言せず、時間をかけて自然の力に待つ謙虚な姿勢に好感がもてた。

 私たちがみせてもらった6月10日は、春の渡りのシーズンを過ぎており、夏鳥のサギ類やカワウの集団が多数休息していて、鳥たちが安心できる場所になっていた。

 葛西地域のみの過去の渡来数に関するデータは今回入手できなかったが、東京湾の全数についてのデータ(日本野鳥の会東京支部 1976−1994年)と最近の葛西地域カウントデータ(日本湿地ネットワーク、シギチドリ全国カウント1996-1997年)を得た。これらのデータは東京湾の渡来地が埋立によって受けた影響の大きさと環境復元の困難さをうかがわせる。三番瀬などの残された自然環境を守りながら、復元をめざす息の長い取り組みが必要であろう。その意味で重要な役割をもつ葛西の人工環境だが、底生生物の調査にみられるようにまだ不安定である。推移を慎重に見守って適切な対応をとっていくことが望まれる。

 

 

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