3. 調査結果
(1)概況
この人工海浜のうち、東なぎさは、自然干潟である三枚洲に連なるなぎさで、自然保護区として昭和58年に造成を完了し、一方西なぎさは、市民への解放を目的に昭和63年に造成を完了している。投入した砂泥も、東なぎさは浚渫砂泥を、西なぎさは親水公園として考えられているため自然の山砂である。
両なぎさの中央部には、島堤が設けられており、砂泥の流れ止めとしての機能を持たせていると思われる。
(2)造成地の傾斜及び泥土の粒度組成について
東なぎさの傾斜は、外周をとりまく導流堤の近辺を除くと、全体的におよそ1%である。前回調査した広島県五日市の人工海浜の、海岸付近が急傾斜、潮干帯下部で傾斜が緩やか。という地形と較べるとかなり自然の干潟に近く感じられる。
投入された砂泥の粒度は、A・C地点は砂質、B地点は島堤の効果によるものか、粒度の小さい粘土〜泥質であった。
(3)各地点における生物量及び土質と考察
◎A地点
葛西人工海浜は、東なぎさ西なぎさとも、外周を導流堤で弧状に囲んだ形状である。この地点は、ほぼ導流堤の東西の先端部分を結んだ線上である。また、東なぎさは、その先の三枚洲に連なっており、砂泥の流出はあまり見られないようである。
採集された底生生物(アナジャコ類)はニホンスナモグリのみ(採集深度62cm、♀、抱卵個体)で、これはこの地点の土質が、粘土分がほとんど無く、細砂〜砂主体であるためと考えられる。
また、採取したサンプルコアを通る巣穴の状態からの推測であるが、アナジャコ(Upogebia major)についてはほとんど分布していない。
したがって、巣穴密度16〜19個/平方mより、A地点には、1平方mあたりニホンスナモグリが16〜19個体(湿重量で約60g/平方m)生息すると思われる。
◎B地点
岩の投入により、島堤を造った部分の内側であり、波浪の影響を受けにくいため、細粒の粘土が流出せずに残っていると思われる。このため、A地点と対照的に、採集された個体はアナジャコのみであった。地盤高からすれば、A地点の方が低く、アナジャコはそちらを好みそうであるが、地盤高よりもむしろ土質により分布がきまっているようである。
巣穴の数は、密度の高い部分で平均198個/平方mなので、個体数は99個体/平方m(湿重量で約500g/平方m)となる。
◎C地点
導流堤に近い地点であり、粘土粒子はほとんど含まれず、粗砂〜砂質であった。
粒度組成と、地盤高が高い関係か、採集個体なし。わずかに見られる巣穴もカニのものと思われる。
採集個体 |
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A 地点
・ニホンスナモグリ採集深度62cm
甲長15.5mm
(♀ 抱卵個体) |
B 地点
・アナジャコ 採 集深度58cm
甲長(切断)
・アナジャコ 採集深度60cm
甲長24mm |
C 地点 採集個体なし |
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