◎ 各地点における生物量及び土質と考察
はじめに、南港野鳥園人工干潟の立地条件が、我々がこれまで調査してきた、広島五日市・葛西の2つと大きく違う点から述べる。
当人工干潟は、前述したように、大阪南港の埋立地内に造成された人工干潟であり、干潟そのものが直接外海に開口していない。これは、五日市のような潟土の流出が起こりにくい、又、葛西西なぎさのような泥土の堆積により粒土組成が変わる、といったことも起こりにくい反面、堤防下に埋設されたヒューム管のみで外海と連絡している為、海水の移動、交換が少ないという面も併せ持つことになる。
もう一つ、前2地と大きく異なる点は、南港野鳥公園人工干潟には、隣接する自然干潟がない。ということである。五日市では、八幡川河口干潟が、葛西東なぎさでは三枚洲が隣接して存在し、両人工干潟へ底生生物を供給していた。この事は、後述するが、生物量と生物種に影響していると思われる。
次に、各調査地点の特徴を述べる。
1. A地点
p.3 図1に示したように、西池との連結部を通して海水を導入しており、連結部から離れた部分は、塩類濃度がかなり低くなっていると思われる。また、水の移動は雨水の流入か、潮位差による往復であり、この点でも北池奥部はかなり淡水性の強い環境であると思われる。また、水流がほとんど無いことによるものか、北池奥部は、藻類が非常に多く見られた。
北池は、1995年に掘削により西池と連結し、海水を導入しているため、干潟としては3年目ということになる。また、海水の導入に伴い、淡水性の植物はある程度枯死したと思われる。表3の土壌図に示した、黒色有機質(植物残渣)は、この時の名残と、上記藻類の枯死体であると思われる。
2. B地点
西・北池の連結部であり、掘削工事によるものか、覆土は他の2地点に較べて薄い。北池奥部からの塩類濃度の低い水と西池側からの海水が混じり合うこと、また、北池からの水の流出はこの場所のみであるため、降雨時、干潮時には水流もあり、これらの面ではもっとも河口干潟に近い環境である。
3. C地点
造成時より海水を導入した池である。3地点の中ではもっとも外海の影響が大きい場所である。1995年にヒューム管の増設工事を行い、海水の交換量を増やしている。とはいえ、ヒューム管の埋設方法からすると、海水は、捨石の隙間を通って交換される為、直接海に面している自然干潟と較べた場合、波浪、潮位変化等の影響は非常に小さいと思われる。
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図2 ヒューム管埋設部概念図
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