(4) 評価書の結論についての問題点
藤前干潟の埋立てに係る環境影響評価の最終結論としての評価書について、水質に関する問題点の一例を下記に示す。
第3部第1章(埋立て後の水質予測)では、「TーN及びT-Pは現況及び存在時とも環境基準を満足していないが、下水道の普及及び総量規制の効果により、存在時には現況よりも低くなると予測される。従って、環境保全目標は達成されると考えられる」となっている。準備書の段階から「将来の下水道普及や総量規制に関する計画や予定をもとに将来の水質を予測して現況と比較することは何ら干潟埋め立ての影響を予測するものではない」ことが意見書により指摘されてきた。その結果、見解書では将来の予測負荷量をもとに埋立地の存在の有無による水質変化の予測図が掲載され(附属資料
p183- 194)、CODについてみると、日光川前面海域では夏季に0.3mg/l、冬季に0.7mg/l程度濃度が高くなっています」と記載された。しかるに評価書においては準備書の段階の水質変化の予測図(3-1-63-3-1-68)が掲載され、上記結論が記載されている。
これは環境アセスメントの手続き中に指摘された誤りが何ら結論に反映されていないことを示すものである。
(5)モニタリングについて
評価書の第2部第2章および第6章(埋立て工事中の水質汚濁と水生生物に対する影響)で工事による水生生物に対する影響として、「予測の結果影響は小さいと考えられることから、環境保全目標は達成されると考えられる」とし、「工事中は仮設矢板施工部周辺でも定期的モニタリングを実施」し、「モニタリングの調査結果については、検討委員会に報告し、水生生物の生息環境の保全に努める」とある。また、前記評価書第3部第1章においても、「環境保全対策として、既存干潟の改良などを検討するため、モニタリングを実施し影響を把握するとともに、検討委員会の指導・助言を得ながら、干潟改良の試験施工を行ない、その効果を確認しつつ、干潟のもつ水質浄化機能を回復するよう努めていく」とある。
ここでは、「モニタリング」という極めてあいまいな表現で「環境保全対策」が取られることになっている。しかし、具体的に「何を」、「いつ」、「どこで」、「どのように」測定するのか何も示されていない。環境アセスメントとしてわずか1年間、4回しか水質や生態系調査を行なわなかった名古屋市が、それ以上の時間と資金をかけてモニタリングを実施するとは思えない。とすると年に1-2回程度であるが、それでも定期的モニタリングである。しかしそのような粗雑な間隔では生態系への影響は把握し難いし、影響が把握できたとしても、その時点では対策が間に合わないということになり兼ねない。本当に名古屋市はモニタリングを実施し、生態系影響が認められる場合には直ちに埋立てを中止し、対策を講じる意欲があるのだろうか? もし、そのような意欲があるならば、建設省が長良川河口堰について実施したように、数箇所の水質自動観測ステーションを設置し、データを検討するモニタリング委員会を設置し、データを公開するシステムを構築するべきであろう。
名古屋市はモニタリングの結果を「検討委員会」に報告し、その指導・助言を得て、工事に反映させるとしているが、「検討委員会」は名古屋市の「干潟の整備計画」を簡単に容認している委員会であり、モニタリングの結果について正しく判断できるかどうか不安である。長良川河口堰と同様にモニタリングの結果を公開するとともに、検討委員会を公開することを強く要望する。
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