Fujimae Booklet 2

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高田 博 日本野鳥の会
大阪支部・南港グループ代表

 藤前の人工干潟計画について、南港野鳥園での経験から意見を述べさせてもらいます。

 まず、1)どんなに立派な人工干潟を作っても、今の藤前干潟の代償には到底なり得ないこと。さらに、2)今の干潟の先端部への浚渫土の投入は、人工物で藤前干潟の前面を遮る形となり、潮流をはじめとした様々な要因が藤前干潟に悪影響を及ぼすことは間違いないということ。この二つの点でとても納得のできない計画です。

 南港野鳥園は、1983年に開園した人工の干潟です。ただ、ここは、防波堤の内側にあり、大阪湾と園内の海水池が15本の導水管でつながっていて、海水池に干潟ができるようになっています。

 1995年に干潟を拡張して、少しは面積的に安定した状態に移行しつつはあるものの、少しの環境変化で底生生物相が激減したりして、まだまだ、ガラス細工のような人工干潟です。人間が少しずつ手を入れて、その後は自然の力にまかせてはいるのですが、干潟の生物が思った通りに増えてはくれません。これからまだまだ何年もかけてやっていかないと安定した人工干潟にはならないと実感しています。

 人工干潟というのは、建設費と維持管理費は膨大です。また、干潟を見ていくNGOの人達のエネルギーもかなり必要です。放っておけば、人工干潟はただの埋立地や荒れ地に変貌してしまうでしょう。

 南港のように10haにも満たない人工干潟を維持するのですら大変なことは、身にしみて感じています。藤前のように、外海に人工干潟を作れば、その維持管理はもっと大変なことは目に見えています。安易な考えで人工干潟を作ることには賛成できません。

 

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