Fujimae Booklet 2

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55

 

野鳥の
渡来数からみた
「人工干潟」の
評価

 はじめに
1 広島港
  五日市の例
2 東京湾
 葛西海浜公園
 −東なぎさの例

3 大阪南港
   野鳥園の例

 

 野鳥の渡来数からみた「人工干潟」の評価

はじめに  

 渡来地の環境変化は、伝統的な渡りを続けている渡り鳥にとって、致命的な重要性を持つ。いいかえれば、人間の目からは把握しにくい環境の変化も、生死をかけた渡り鳥の渡来状況からみれば、より明瞭になる。

 「人工干潟」がそこにあった自然の干潟の代償になっているかどうかは、渡り鳥の渡来状況の変化をみるのが一番であるが、その把握には、野鳥の生態にあわせた長期の継続観察が必要であり、それにはその地域で観察している方々のデータが欠かせない。

 したがって今回の調査は、地元の方々からの聴き取りや、データの提供を受け、それを分析することを主眼とした。

1 広島港五日市の例  

 さいわいここでは、人工干潟の造成に先立って、日本鳥類保護連盟広島県支部や日本野鳥の会広島県支部における野鳥の渡来状況の把握と、人工干潟の造成目的とその目標とすべきところが広島県港湾局との間で話し合われ、その後の継続調査もしっかり行われていた。

 当初から関わられ、今も継続して調査や研究を進めておられる日本野鳥の会広島県支部の日比野政彦氏にお話をうかがい、データをみせていただいた。その膨大な資料は氏自ら分析を進められたものであり、人工干潟の改良や八幡川河口部と関連地域の環境保全に資する努力に大変感銘を受けた。

 しかし、20年にわたる野鳥の渡来数の経年変化を一目みれば、そうした努力もありながら、やはり渡り鳥にとっては厳しい環境の変化であることがわかる。

 ここには、八幡川河口の特徴であったヒドリガモの渡来数変化(図表−1)と、広島県の事前調査で把握された優占種4種とその現状との単純な比較(図表−2)をしてみた。

 結果の考察

 特徴的な優占種であったヒドリガモやハマシギが約4分の1に減少している事実が端的に示しているように、人工干潟造成から10年たった現在、残念ながらそれが成功したとはとてもいえない。かつてあった八幡川河口から扇状に広がり、五日市地区の前浜干潟の埋立の影響は重大で、人工干潟で代償することはできなかったというべきであろう。

 現在の渡来は、残された八幡川河口の干潟に大きく依存しており、その環境保全を第一にしつつ環境修復が図られることを期待するほかはない。

 

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