1. 個体数調査によって把握できる個体数の変化
アナジャコ類の個体数調査を行う上での問題点の一つに、個体そのものを捕獲することが極めて難しい、ということがある。
アナジャコ類に限らず、底生生物は、生活場所が潟土内部であるため、通常我々の目に触れにくい。したがって、藤前干潟を守る会でも、底生生物調査は潟土を25cm角で掘り出し、ふるいにかけて底生生物を拾い出すという方法をとる。
ところが、アナジャコ類の場合、新規着底個体であれば、巣穴は数cmの深さだが、着底して1年も経てば、巣穴の深さは1mを越えてしまう。このため、シャベルで数十cm掘った程度では、ある面積に生息するアナジャコ類の多くは捉えきれない。
したがって、巣穴開口数により、アナジャコの個体数を推定するのであるが、ここにもう一つの問題がある。新規着底個体の巣穴開口部は非常に小さいため、使用している巣穴であっても塞がりやすく、かつ、見つけにくいためカウントしにくい。さらに、ゴカイ、ヨコエビなど他の底生生物の巣穴との区別がつきにくい。ということもあり、新規個体の個体数の把握は非常に難しい。
前述した潟土の掘り出しによる方法ではどうかというと、潟土に着底したばかりの新規個体は、体長が5mm以下、色はほぼ透明、体表も甲殻というほどの強度がないため、ふるいにかけた段階で、潰されてしまう、又は見落とす、という量がかなりあると思われる。この結果、春期の調査は実数をかなり下回る数値になっている事が考えられる。
図4のグラフを見ると、5月より6月の方が巣穴数が増加している。これは、一般に言う生存曲線から完全に外れていることになる(生存数が時間の経過に伴って増加する事はない)が、これは、上記の、新規個体の全てが捉えきれないことに加え、新規個体の成長に伴って人目に付きやすくなること、さらに、発生の遅かったものが順次着底してくるためと思われる。
こうした条件を加味して、棲息数を推定してみたのが以下のグラフである。
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