「藤前干潟を守る会」は、ここ数年、藤前干潟における主要な底生生物であるアナジャコ類に焦点を当て、底生生物調査を続けてきたが、この2年(1998、1999年)は、夏期(8月末〜9月初めにかけて)に、底生生物量が激減するという現象が続けて起こっている。
本報告は、特にアナジャコ類の個体数の変化に焦点を当て、底生生物量を激減させた原因や、それが起こった時期を考察しようと試みたものである。さらに、藤前干潟の環境保全のありかたについて、いくつかの提案をするものである。
本文中にも書いたことではあるが、「調査をしている」という我々にしたところで、干潟についてはほとんど知ってはいない、と言っても過言ではない状況である。
藤前干潟は、寸前のところで(極めて象徴的ではあるが)「ゴミ処分場」となるところを免れ、保全されることとなった。だが、「保全」とは、フェンスで囲み、ヒトの手の届かぬところに隔離することではない。「里山」「干潟」とは、ヒトと環境の間に、やり取りがあってバランスを保っている生態系であること、そして一旦バランスを崩してしまえば、その修復、恢復にはバランスを崩した時以上のエネルギーが要求され、そして多くの場合、元に戻ることはない。
本報告が、藤前干潟の環境を本来の自然環境に近づける一助になれば幸いである。
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