Booklet 02 P.2

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登校拒否の子どもや親にとっては、依然として非常に住み心地の悪い状況は改善されていない。

 

第1章 問題提起
    〜今なぜ「教育改革」なのか
 

(1)根強い「登校拒否」への無理解や偏見

登校拒否・不登校、いじめ、学級崩壊、高校中退、ひきこもり、非行など、子どもたちを巡る様々な「問題」が、大概はマイナスのイメージを持って連日のように報道され、また、教育現場の「苦闘」や家族の苦悩の様子などが伝えられている。さらに、「神戸事件」をはじめ、昨今の京都や新潟の事件など、青少年による特異な犯罪事件が続発する中で、これまでの教育のあり方や家庭の変容といったことが、否定的なニュアンスで語られている。

これらの、大きくは「教育問題」と括られる現象は、子どもたちの置かれた状況を映し出す鏡であることには間違いないが、それをどのように受けとめるかによって、子どもたちに対する家庭や学校、社会の関わり方は、大きく違ってくる。もちろん、犯罪行為やいじめそのものは決して許されることではないが、彼らをそこまで追いつめた背景や要因を問うことなしに、厳罰主義や管理強化で臨んだところで、事態は改善されないであろう。

 また、登校拒否の子どもや親にとっては、学校に行かないこと自体が子どもの弱さやわがままであり、家庭の「教育力」の低下に起因しているのではないか、これを「放置」していると、ひきこもりなどの「社会不適応」に陥るのではないかといった見方が、社会の中には依然として根強くある。さらには、非行等の反社会的問題行動の温床となるという見方すらあり、青少年事件の報道にも、その事件との因果関係を明示しないまま「少年は不登校で状態であった」などという記述が数多く見られる。いずれにしろ、登校拒否の子どもや親にとっては、以前に比べるとだいぶ社会の理解が進んできたとは言え、依然として非常に住み心地の悪い状況は改善されていない。

(2)日教組全国教研集会に参加して

私は、娘二人の登校拒否と十数年付き合う中で、否応なくこれらの問題に関心を持たざるを得ず、「親の会」などの活動にも多少関わってきた。そのような中で、さる1月、私は北海道教職員組合の推薦により、金沢市で開催された日教組第49次教育研究全国集会・特別分科会「いじめ・不登校」において、「わが子の『登校拒否』から学んだこと」というレポートを発表し、討論に参加する機会を得た。

 そこでまず、急速に政治課題ともなりつつある「教育改革」を巡る議論の参考になればと考え、次章でそのレポートを紹介させていただく。その上で、今後の教育改革論議に大きな影響を与えるであろう「21世紀日本の構想」懇談会報告について、登校拒否を通じて学んだことを手がかりに、批判的な検討を行いたい。そして、子どもたちが生き生きと暮らしやすい社会を目指すために、今後の「教育改革」はどうあるべきかについて拙見を述べたい。

 読者の皆様から、積極的にご意見・ご批判をいただければ幸いである。

 

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