5)里山の民俗・文化の保存
先に述べたように、里山の自然と民俗・文化は一体となっています。その文化を保存し、構想の中に生かすことは極めて重要です。海上の里で使用されていた農具は、できるだけ実際の田んぼに使用する試みをします。それらの農具を作成・修理・展示する作業場が必要です。わらや竹は積極的に使い、海上の里や森で利用する方法を考えていきます。昔ながらのカヤぶき屋根の木造家屋を復元することも必要です。聞き取りによれば、海上の里ではカヤ場が少なくて十分に取れないので、二期作として小麦を植え、その麦・わらをふいて作ったと言います。また、神社の祭礼や神事を復興できる環境が生まれれば良いと思います。
6)公園の運営への市民参加の実現
公園の運営については、計画段階から市民参加で行うことは先に延べました。さらに、公園の維持管理にも市民参加を原則とすることです。田んぼの田起こし、田植え、草刈り、稲刈り、脱穀などの作業、山林の伐採、下草刈りなど、センターが市民ボランティアを募集して市民と共同で行うことです。本来は、里山の住人が行う作業を、よそ者の市民が行うわけです。作業を通じて、よそ者がしばしの住人になることは、意味があることではないでしょうか。それは、都市住民にとって、まさに自然に触れ、一過性でない自然体験そのものになります。現代はそのような自然体験が求められているのです。
7)子どもから高齢者・身障者への配慮
最後にもう一つは、やはり公営の「公園」ですので、子どもから高齢者まで誰でも利用できるものにしなければなりません。青年や大人ばかりが楽しめる施設とするのではなく、子どもたちが安全に遊べる場所であり、遊びながら環境教育の場として利用することも当然考えられます。身障者や高齢者が車椅子でも散策できる場所であることも必要ですし、そのための施設や工夫が必要です。実際に,目の不自由な方々が,10月上旬に歩きに来ています.沖縄記念公園では,身障者や高齢者のために、一部の園路に100円で低速の電気自動車を走らせているそうです。また,身障者には入園無料にしています.マウンテンバイクと歩行者が狭い道を共有するのは危険性があるので、専用道路を設けるとか、歩道を分離するとかの対策を考えなければなりません。
8)「自然と共生する景観」を作り出す
いかに生物多様性が保持されたとしても、市民がそこに出かけたくなるような場にしなければ、市民に歓迎されません。しかし、今までの公園のように、不特定多数の市民におもねることでの美しさを追求するのでは困ります。人間が王様になるのではない「自然と共生する景観」とでも呼ぶ美しさを市民と行政が合意して作る出すのです。
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