おわりに―
今までなかった新しい「里山公園」の提案 |
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皆さんは、この里山公園構想をどのように思われたでしょうか。「公園」というイメージとは大分違うことを感じられたかと思います。一般的に現在の公園の大部分は、自然の森を切り払い、芝生を植えたり、池を造って庭園風にしたり、プールやスポーツ施設を整えたり、植物園や動物園を作ったり、サイクリングロードを巡らせたりしています。レジャーランドのような公園が多いのは事実です。わたしたちはそのような公園もあって良いと考えます。
しかし、この里山公園は、既にあるの「公園」のイメージでは、せっかくの価値を壊してしまいます。わたしたちの構想は、海上の森の里山の自然と文化を最大限尊重した公園です。新しい概念の「公園」です。こういう公園があっても良いのではないでしょうか。ありのままの身近な自然とそのふれあいが見直されつつある時代です。そのような時代の要請を受けて、これからは、ありのままの自然の姿を大切にし、その地域の自然や文化の特性を最大限生かす特色ある公園が誕生してくると思います。この構想は、その第1号にしたいと考えています。
愛知県や万博協会が計画している万博事業は、「自然の叡智」「自然との共生」を万博の理念としているにもかかわらず、海上の森の中心部分を破壊する計画です。その理念がまったく生かされていないどころか、明らかに矛盾しています。計画では、里山の景観が残る海上の里を潰し、篠田池の周辺に里山を復元することにしています。現在は休耕田が多い海上の里の棚田を、世界の人々に見てもらうのでしょうか。今ある里の棚田を隅々まで復活し、周囲の里山林をよみがえらせ、「自然との共生」「持続可能な社会」のひな形を世界の人々に見せることで、はじめて日本の里山文化を理解してもらうことができるのではないでしょうか。なぜそれをしないのでしょうか。日本の里山自然と文化は、東アジアや東南アジアがルーツです。機械化によって草原や河畔の木本がなくなり、川がまっすぐにされたりと、身近な自然が消失していくという問題を抱えているのは、欧米も同じことです。里山という自然のあり方を題材に発信し、呼応しあえるはずです。
わたしたちは、万博の理念を忠実に具体化するならば、海上の森の里山環境を整備してそれを出展することが正しい選択であると考えます。2500万人もの人々を海上の森に入れるのは、環境に過大な負荷を与え、土台無理な話しです。海上の森には1日1000人程度を限度として入場規制をし(県の調査では、ゴールデンウィークの最大入場者が約1000人です)、主会場を愛知青少年公園に移し、そこでヴァーチャル・リアリティー(仮想現実)の技術を使って海上の森を再現すれば、海上の森に負荷を与えないでもすむと思います。そして、コンピュータ・テクノロジーを駆使して、世界の里山とのリアル・タイムのネットワークを作り出すというのはどうでしょうか。万博協会のコンベンションで最優秀賞に選ばれたのも、そのような案でした。そして主会場では、世界各国の自然との共生への取り組み、ゼロエミッションへの最新技術などを展示してもらうのです。そこで、その分野で貢献できる日本の進んだ技術を、世界に披露したらどうでしょうか。
わたしたちは、万博構想全体の中に、海上の森の里山自然と文化を位置づけていけば、万博の理念に忠実で、しかも日本が世界の人々に発信できる実り豊かな万博を開催できると考えています。それには、愛知県をはじめとする行政当局が、これまでの新住事業・道路事業をやめ、海上の森からの「勇気ある撤退」を決断してほしいと願わずにはおれません。
わたしたちは、一人でも多くの方々に、行政当局の現計画とは別に、市民の手によるこのような里山公園構想が提案されていることを知っていただきたく、この文書をしたためました。この里山公園構想を十分にご理解くださり、自分なりの構想と願いで、どうぞご参加くださいますよう心からお願いいたします。
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