(はじめに)
新しい国家主義の台頭が始まった。P2
私たちの反対運動は、先祖代々おかげをこうむってきた海を尊んで守り、子々孫々に引き継ぐ真心に発するものである。祖先と子孫に恥じないよう務めを果たしたいという願いから出ている。―ヘリポート建設に反対する沖縄の心 P2
県民一人一人の平和と正義の実現を求める願いに耳を傾けない稲嶺県政と、「利害勘定」に問題を切り縮める識者たち。P3
負の遺産を相続してきた歴史に終止符を打ち、「共生」を基本に据えた日本列島社会を築くという課題を今こそ考えなければならない。P3
(一、新国家主義の歴史観)
「アメリカへの従属は賢い選択であった」田原総一朗の基本認識。P4
真偽や正邪の判断を捨てて損か得かに判断の軸を置くのは、富と繁栄を唯一の基準にすることだ。P5
国家を越えるより高次の正義の規範のない歴史観。P5
(二、国家主義復活の過程とそれをうながす思想状況)
戦後、目標を失ったナショナリズムは「家族、村落、地方的小集団のなかに分散還流した」。P6
「国内消費用ナショナリズム」と「その都度ナショナリズム」 P6
高度経済成長期には、企業が忠誠と統合のシンボルとして機能し、企業への帰属感情がナショナリスティックな帰属感情を準備する貯水池となった。P7
「安楽への全体主義」の登場。P7
バブル崩壊後さらに強まった欲望と利益の私中心主義、自己愛のナルシシズムが、差別、排外、国粋の言説に引き寄せられるようになった。P8
(三、西尾幹二著『国民の歴史』の分析)
この本の基本的特徴は、「国民の歴史」を「文明圏」としての日本列島の独自性によってすっぽり包み込むところにある。P9
やがて「日本国民」となるべき集合を維持し続ける集合的意思が、日本列島に人が住み着き始めた遠い過去から働いていて、日本歴史の連続性を保証している、という驚くべき見方。P10
神秘な民俗的な力が背後で日本の歴史を動かしているという神秘主義。P10
武力を行使して国外へ進出する行為は文明の発展にとって必然であり、それを正邪善悪の道徳的判断によって批判してはならない、という歴史観。P11
侵略戦争は「お互い様」、日本は「起用に賢く立ち回れなかった」だけなのか。P12
「国民の歴史」四つの特徴。P13
(四、対決の構図)
正邪善悪の倫理的判断によらずに利害損得の判断に立って歴史を評価せよ、ということはなにを意味するのか? P14
共生の道を閉ざし、国益中心主義へ。P14
歴史の連続性をより深く、より根本的に支えているのは、三十六億年前からの生命の持続である。悠久の昔からの生命の遺伝情報が、今生きている地球上の各個人に伝わり、私たちを生かし、私たちの自由を支えている。歴史観の基礎は、そうした生命の継続と発展への畏敬とその尊厳の認識に置くべきである。P15
人類がさまざまな壁を超えて連帯し、共生する未来を構想し、その理想に現実を近づけること、それがくり返し裏切られるとしても希望を失わないこと、人間はよりよい社会と人間のあり方を求めつづける存在であること、そうしたメッセージを歴史の中から探り出すことが、歴史学と歴史教育のつとめである。P15
人間のためのよりよい社会への希望は持てないという虚無意識を基盤とした権力肯定のイデオロギーは、やがてそれを批判する意見を禁止し、総力戦へと国民を駆り立てる全体主義の温床となるであろう。P16
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